決済技術が進化を続けるなか、絶えず変化する消費者のニーズに応えるかたちで、新たな決済方法が次々と登場しています。多種多様な決済プロバイダーが市場に参入する一方で、安全な決済環境を構築するために新たな法規制やルールも登場しています。多くの要素が絡み合うなかで、企業はどのようにしてこの複雑な状況を乗り切り、最新の決済ソリューションを最大限活用できるのでしょうか。その答えは「決済オーケストレーション」にあるかもしれません。
決済オーケストレーションとは?
決済オーケストレーションとは、複数の決済ゲートウェイ、決済方法、決済プロバイダーをひとつのプラットフォームでまとめて管理し、決済取引の開始から完了までを包括的にコントロールするプロセスのことです。
ひとつの決済ゲートウェイあるいは決済プロセッサだけを利用している場合、その1社がダウンしたらビジネスは停止し、最悪の場合、顧客を失うリスクすらあります。決済処理がうまくいかなかった利用者の62%は、そのサイトに二度と戻ってこないという調査結果があります。だからこそ、複数の決済ルートを確保しておくことが鍵になってきます。決済オーケストレーションを活用すれば、システムが自動的に代わりとなる最適な決済ルートを見つけて処理を継続し、利用者にスムーズな決済体験を提供します。
これは、決済オーケストレーションがビジネスを支えるうえでのほんの一例にすぎません。続けて、その仕組みをさらに詳しく見ていきましょう。
決済オーケストレーションの機能と役割
複数の決済ゲートウェイの統合
世界は広大で、たった1社の決済ゲートウェイではすべての地域をカバーできません。一方で、複数の決済ゲートウェイを利用するとなると、負担が非常に大きくなります。決済オーケストレーション・プラットフォームはこうした課題を解決します。ひとつのプラットフォームを通じて、さまざまな国の複数の決済ゲートウェイと連携することが可能になります。
インテリジェント・ルーティングとフェイルオーバー処理の自動化
利用者が支払い手続きを開始すると、AIが事前に設定されたルール(例えば、決済方法、地理的な位置情報、リスクプロファイルなど)に基づいて最適なルートを自動的に選択します。これにより、手数料の最適化や不正利用の防止が実現します。また、加盟店が指定した特定のルートに従うことも可能です。さらに、決済ゲートウェイの利用不可をリアルタイムで検知し、即座に取引を稼働中のゲートウェイに再ルーティングすることで、承認率の向上にも寄与します。
決済データの一元管理
今日のビジネスにおいて、データは最も重要な資産のひとつです。しかし、グローバルに事業を展開し、何社もの決済サービスプロバイダー(PSP)を利用している企業にとっては、データの収集と管理は大きな課題となります。データがバラバラになっていては、せっかくの価値も発揮できません。決済オーケストレーションは、すべての決済データを統合し、ひとつのダッシュボード上で一元的に管理することを可能にします。全体像が可視化されることで管理が容易になり、意思決定の最適化につながります。
加盟店にとってのメリット
市場拡大の加速
新しい市場に進出する際、現地の決済方法への対応は不可欠ですが、複数の決済プロバイダーと個別に接続するのは複雑で時間がかかります。決済オーケストレーションを活用すれば、単一のAPIでグローバルなPSP(決済サービスプロバイダー)やアクワイアラーのネットワークに接続でき、技術基盤を毎回作り直すことなく、迅速にスケールアップすることができます。
コストの節約
複数のPSP(決済サービスプロバイダー)をマニュアルで管理する必要がなくなるだけでも、コスト削減には大きな効果があります。しかし、Omiseのインテリジェント・ルーティングエンジンはさらに一歩進んでいます。決済金額、地理的な位置情報、通貨などの要素を分析し、各取引に最も適したルートを選定することで、手数料を削減し、長期的にはさらに多くのコストを節約できます。
コンバージョンの向上
複数の調査が示している通り、利用者は決済方法の選択肢が多い企業を好む傾向があります。希望する決済手段を選べるかどうかは、購入に不可欠な要素です。従来のクレジットカードから、BNPL(後払い)のような新しい決済手段まで幅広い選択肢を提供することで、カゴ落ちを防ぐことができます。こうした対応を可能にするのが、決済オーケストレーションです。さらに、失敗したり拒否されたりした取引を別のルートに自動的に再ルーティングできるため、承認率が向上し、スムーズで成功率の高い決済体験が実現します。
コンプライアンスの遵守
決済オーケストレーション・プラットフォームには、グローバルおよび各地域の法規制に精通した専門家が在籍しており、コンプライアンスの遵守をサポートします。これにより、企業は罰則や法的リスクを回避できるだけでなく、本来のビジネスに集中することが可能になります。
決済オーケストレーションはどのようなビジネスに向いているか
グローバルなプラットフォーム
マーケットプレイスや国際的なECブランドなど、複数の国や地域で事業を展開している企業にとって、各地域での決済プロバイダーとの接続や法規制への対応は、大きな負担になります。決済オーケストレーションを活用すれば、それぞれの地域で各決済プロバイダーと個別に連携や開発を実施する必要はなく、ひとつのプラットフォームで接続できます。
ISV(独立系ソフトウェアベンダー)
幅広い利用者層に対応し、地域ごとに異なる決済ニーズに応えることは、決済処理プラットフォームを提供するソフトウェアベンダーにとって大きな負担です。決済オーケストレーション・プラットフォームを利用すれば、ISVは拡大する顧客の多様なニーズに柔軟に対応できるだけでなく、もっと良質な顧客体験を提供することも可能になります。
エンタープライズ
ブラックフライデーや初売りなどの大型イベントは最も売上が期待できるタイミングです。大量の取引を扱う大企業にとって、決済の失敗やシステムダウンは許されない事態です。決済オーケストレーション・プラットフォームを通じて複数の決済ゲートウェイに接続することで、フェイルオーバー(代替処理)のサポート、稼働時間の最大化、コンバージョンの維持が可能になり、アクセス数が集中する期間中の収益損失を防ぎます。
越境ビジネス
海外に住む利用者に向けて商品やサービスを販売する企業にとって、幅広い決済方法と通貨への対応は売上拡大とカート放棄の削減に不可欠です。複雑な手続きや自力での対応を避けつつ、これを実現する最もシンプルな方法が、決済オーケストレーションの利用です。
決済オーケストレーションの導入についてもっと詳しく知りたい場合は、こちらをご覧ください。
Resource
1 - Research shows customers want payment method choice. (2024, October 17). Access Paysuite. https://www.accesspaysuite.com/blog/research-payment-method-choice/
2 - Max. (n.d.). Payment options drive online shopping choices for 70% of consumers | Payments Industry review. https://paymentsindustryreview.com/payment-options-drive-online-shopping-choices-for-70-of-consumers/
3- 10 reasons why payments fail – and what you can do about them / blog. (2021, February 17). BridgerPay | Payment Operations Platform. https://bridgerpay.com/learn/blog/djYLCi830bobAFbbsiUb