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東南アジア市場における不正利用の現状とOmiseの取り組み

June 13, 2025

東南アジアに住んでいるなら、Shopee、Lazada、TikTok Shop、TokopediaといったECプラットフォームの名前を聞いたことがあるでしょう。あるいは、すでに買い物をしたことがあるかもしれません。コロナ禍によってデジタル化が急速に進んだ東南アジアでは、ECプラットフォームの利用者が増加し、オンラインショッピングが新たな生活様式として定着しています。2027年までには人口の88%、つまり約4億200万人が何らかの形でEコマースを利用すると推定されています[1]

これだけでも驚くような数字ですが、それだけでは終わりません。

他の地域と比べて、東南アジアは電子決済が発展しており、種類も多彩です。オンラインショッピングを手軽かつ便利に利用できる要因になっています。また、タイのPromptPayやマレーシアのDuitNowに代表される即時決済システムでも世界をリードしており、Atome(BNPL)、GrabPay、Rabbit LINE Pay(電子ウォレット)などの決済手段も提供しています。東南アジア市場における電子決済の取引額は、2028年までに4,170億米ドルに達すると予測されており、2023年から60%の増加となります[2]

Eコマースの拡大は経済を後押ししていますが、それに伴うリスクも無視できません。

急拡大する東南アジアのEコマース詐欺にどう立ち向かうか

「うまい話には落とし穴がある」とは知りつつも、魅力的な話には心惹かれるものです。Eコマースの普及が加速する一方で、比例するように詐欺のリスクも急速に高まっています。2025年までに、東南アジアは世界でも最もサイバー詐欺が急増している地域のひとつとなると見られています。

タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドネシアでは、半数前後の消費者が「週に1回以上は詐欺に遭遇している」という報告があるほどです[3] 。SMSによるフィッシングから個人情報の盗難に至るまで、日常的にさまざまな種類の詐欺に遭う可能性があるのです。

マーケットプレイスで増加する新たな不正行為の事例

「チャージバック詐欺」と「トライアングレーション詐欺」を組み合わせた手法をご紹介します。この手法では、詐欺師がソーシャルメディア上に偽のオンラインショップを開設するところから始まります。このショップでは、正規の販売業者から盗んだ商品画像や説明文が使われています。購入者が注文をすると、詐欺師はその商品を正規の販売業者から購入します。そして、販売業者は決済サービスを通じて、支払い用のQRコードを発行します。

詐欺師はそのQRコードを購入者に転送し、購入者はそれが自分の注文の支払いだと思い、何の疑いもなく支払いを完了させます。

ここで問題なのは、支払いが確認された後、詐欺師はマーケットプレイスを通じて返金を申請し、購入者が支払った金額を自分のものにしてしまう点です。購入者のもとには商品は届かず、連絡すべき正規の販売者もおらず、お金を取り戻す手段も見当たりません。多くの場合、購入者はどうすることもできず、なす術がない状態に置かれます。

マーケットプレイス側も、実際に誰が支払いを行ったのかを把握できず、状況を正確に把握できない状態に陥ることがよくあります。支払いの正当性を確認することは難しく、一部のケースではマーケットプレイス自体が被害者となってしまうこともあります。顧客満足を維持するために、マーケットプレイスは返金対応だけでなく、被害者への補償まで求められる場合があり、その結果、金銭的損失を被ることになります。

残念ながら、これは東南アジアで多くの消費者が遭遇している詐欺手法です。さらに深刻なのは、銀行口座を持たない、あるいはデジタルリテラシーが十分でない人々がこうした詐欺のターゲットになりやすく、被害を受けやすい点です。

こうした被害を単なるオンラインショッピングのトラブルと片付けることはできません。根深い社会問題を反映しており、東南アジアの経済にも大きな影響を及ぼしています。国連の報告によれば、2023年に東アジアおよび東南アジア諸国がサイバー詐欺によって被った損失は、推定370億ドルに上るとされています[4] 。このように増え続ける損失は、もはや無視できるものではありません。

不正を未然に防ぐ、Omiseの最新ソリューション

東南アジアを代表する決済プロバイダーとして、Omiseは安全で信頼性の高い取引インフラを提供すると同時に、不正防止に有効な革新的なソリューションを継続的に開発しています。当社はすべてのステップにおいて、自動化技術と専門人材の両方を活用しています。ここでは各ステップを詳しくご紹介いたします。

専門スタッフによる徹底したKYCプロセス
Omiseでは、「誰と取引するか」が信頼の出発点です。当社は、厳格なコンプライアンス基準を満たした正当な事業者のみと取引することで、すべての関係者にとって安全なエコシステムを実現しています。

加盟店登録に必要な情報が提出されると、当社の専門チームがその情報の確認とリスクプロファイルの評価を開始します。具体的には、その事業が金融犯罪に関与していないか、各国の法規制に完全に準拠しているかの確認が含まれます。

多層的な不正検知と取引監視システム

加盟店登録が終わった後は、Omiseを通じて処理されるすべての決済が、複数のセキュリティ層と不正スクリーニングによって保護されます。当社のシステムは、以下のような先進的な技術を活用しています。

  • ハイブリッド型モニタリングシステム:不正分析の専門チームと機械学習ツールを組み合わせて、不審な行動を特定する体制を整えています。将来的には、AIによる分析システムを導入し、決済取引の挙動をリアルタイムで監視することを計画しています。これらの機械学習モデルは、通常の利用者の行動と異常な行動を識別します。異常が検出されると、システムは数ミリ秒以内に決済のリスクを評価し、不正の可能性がある決済を自動的にブロックします。このプロセス全体を通じて、システムは新たな不正の手口に対応できるよう、継続的に学習し進化し続けます。

  • 3Dセキュア認証:Omiseでは、オンライン決済取引を保護するために、3Dセキュア2.0を導入しています。これは、多要素認証を通じて各決済取引の正当性を確認することで、不正利用リスクの大幅な低減させる技術です。 (みなさんも、オンライン決済時にSMSでワンタイムパスワードを受け取った経験があるかもしれません)3Dセキュア2.0の導入により、当社は不正利用を効果的に抑止しつつ、決済取引の承認率を向上させることに成功しています。

  • IP Geolocation技術:IP Geolocation技術はシンプルでありながらも、不正利用を防止する非常に強力なツールです。この技術は、購入者の所在地に基づいて最適な決済処理業者へ支払いをルーティングするだけでなく、注文がどこから発信されているかを特定します。このデータをカード保有者の情報と照合することで、不一致があれば検知し、潜在的に不正の可能性がある決済取引を警告することができます。

購入者および加盟店へのサポート

Omiseが提供する決済サービスを利用するすべての加盟店に対して、円滑で安全かつ迅速な決済処理を実現するためのサポートを提供しています。不正利用の被害にあった購入者への対応をサポートし、加盟店と密に連携しながら調査に取り組みます。当社の目標は、不正防止策を強化し、すべての人にとってより安全な決済環境を築くことです。

コンプライアンスの遵守

Omiseにとって「信頼」は、すべての取り組みの基盤です。当社は、クレジットカード業界の国際的なセキュリティ基準であるPCI DSS 4.0のレベル1に準拠しています。また、サービスを提供するすべての市場において、現地の法規制を遵守しています。たとえば、タイでは「Payment System Act(決済システム法)」に基づきタイ中央銀行(BOT)から広範な金融サービスのライセンスを取得しており、シンガポールではMajor Payment Institution(主要決済機関)ライセンスを保有。マレーシア、日本、アメリカでも、それぞれに相当する認可を受けています。

さらにタイでは、金融機関や規制当局が連携する業界横断的なデータ共有システムである中央不正登録システム(CFR:Central Fraud Registry)との協力を進めています。

東南アジアにおけるEコマース市場は、今後も急速な成長が見込まれており、それに伴って不正リスクも増加すると予想されています。そのため、不正防止はもはやコストではなく、事業成長のための重要な投資と位置づけられています。Omiseは、パートナー企業とともに安全なデジタル決済の未来を築くことに取り組んでおり、利用者にとって「安全性」と「利便性」の最適なバランスを実現することを目指しています。こうした取り組みは、最終的にさらなる経済成長の原動力となると考えています。

安全な決済ソリューションについてもっと知りたい場合はこちらをご覧ください。https://www.omise.co/en/manage-transaction

Source of Asia. (2025, February 3). E-Commerce market in Southeast Asia 2025 – 2026. https://www.sourceofasia.com/e-commerce-market-in-southeast-asia-2025-2026/

Zhong, O. L. (2025, March 17). Evolving Cyber Threats Target Southeast Asia's Underbanked Populations - Thailand Business News. Thailand Business News. https://www.thailand-business-news.com/crime/186744-evolving-cyber-threats-target-southeast-asias-underbanked-populations#:~:text=Southeast%20Asia%20has%20seen%20an,reliance%20on%20informal%20financial%20services.

Jazeera, A. (2025, April 21). ‘A cancer’: UN warns Asia-based cybercrime syndicates expanding worldwide. Al Jazeera. https://www.aljazeera.com/news/2025/4/21/a-cancer-un-warns-asia-based-cybercrime-syndicates-expanding-worldwide#:~:text=While%20the%20report%20said%20countries,Europe%2C%20and%20the%20Pacific%20Islands